民法改正【契約に関するルールの経過措置➁】 (2020.04.06)
前回の記事では、契約関係に関する経過措置について取り上げました。
今回は、権利の時効期間に関するルールの経過措置について見ていきましょう。
「施行日前に債権が生じた場合」または「施行日前に債権発生の原因である法律行為がされた場合」には、その債権の消滅時効期間については、原則として、改正前の民法が適用されます。
上記のいずれにも該当しない場合は、改正後の民法が適用されます。
飲食店での飲食代金債権
①施行日前の2019年8月、飲食店でツケで飲食をした。
②施行日後の2021年4月、飲食店から飲食代金の支払請求を受けた。
⇒①時点(施行日前)に債権が発生しているため、改正前の民法が適用され、飲食代金債権については一年間で消滅時効が完成することとなります。(改正前の民法第174条第4号)
労災事故(債務不履行に基づく損害賠償請求権)
①施行日前の2019年4月、雇用契約を締結し、勤務を開始した。
②施行日後の2020年4月、勤務先の企業における安全管理体制が不備であったために勤務中に事故が発生し、生涯を負った。
③施行日後の2026年4月、勤務先の企業に対して安全配慮義務違反を理由として損害賠償金の支払いを請求した。
⇒②時点(施行日後)で損害賠償請求権が発生していますが、債権発生の原因である法律行為(雇用契約)は①時点(施行日前)にされているため、改正前の民法が適用されます。
~消滅時効の完成について~
改正前「権利を行使することができる時から10年間」
改正後「権利を行使することができる事を知った時から5年間」または、
「権利を行使することができる時から20年間」
生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間については、施行日の時点で改正前の民法による不法行為の消滅時効(「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間」)が完成していない場合には、改正後の新しい民法が適用されます。
交通事故によって負った障害に関する損害賠償請求権
①施行日前の2019年4月、相手方の不注意による交通事故で傷害を負った。
②施行日後の2023年4月、加害者に対して、上記交通事故によって傷害を負ったことを理由として損害賠償金の支払を請求した。
⇒生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間については、施行日時点で改正前の民法による不法行為の消滅時効が完成していない場合には、改正後の民法が適用されます。
2017年4月1日以降に「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った」場合、施行日の2020年4月1日時点で改正前の民法による不法行為の消滅時効が完成していないため、改正後の民法が適用されます。
次回トピックスでは【損害賠償請求権に関するルールの見直し】を取り上げていきます。
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