民法改正【賃貸借契約に関するルールの見直し➀】 (2020.04.10)
賃貸借とは、当事者の一方(賃貸人)がある物を相手方(賃借人)に使用・収益させ、借主がその賃料を支払う事を約束する契約です。
今回の民法改正では賃貸借契約に関連するものに関しても、いくつかルールの見直しがされています。
●賃借物の修繕に関する要件の見直し
事例
・Aさんは、Bさんから家を借りて住んでいる。備え付けのエアコンが故障したため、Aさんは、Bさんに対したびたび修理を依頼しているが、なかなか修理してくれない。
・Aさんは、Bさんから家を借りて住んでいるが、台風で屋根が損傷し雨漏りするようになってしまった。近日中にまた台風が接近しており、至急修繕が必要である。
【改正前】
賃借物の修繕が必要な場合でも、賃借物はあくまでBさんのものであるため、Aさんが勝手に手を加えることはできません。
しかし実際に賃借物を使用しているのはAさんですから、Bさんが修繕してくれない場合でもAさんは一切自分で修繕ができないとなると不便です。
改正前の民法では、どのような場合に賃借人が自分で修繕をすることが出来るのかを定めた規定はありませんでした。
【改正後】
次の①または②の場合、賃借人の判断で目的物を修繕することができ、また、賃借人が目的物を修繕したとしても、賃貸人から責任を追及されることはないことが明確になりました。
①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか、又は賃貸人がその旨を知ったのに、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
②急迫の事情があるとき
●賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化
事例
DさんはCさんに対して自分が所有する建物を貸していたが、その期間中に、Eさんにその建物を売却した。
建物を新しい所有者となったEさんは、Cさんに賃料を請求したが、Cさんは賃料をDさんとEさんのどちらかに支払えばいいいのかわからないといって、支払ってくれない。
【改正前】
建物の賃貸借契約が続いている間に建物の所有者が代わった場合、その後は誰が賃貸人になるのか、新しい所有者は賃料を請求できるのかについて明確な規定が設けられていませんでした。
【改正後】
賃貸借の対抗要件を備えていた場合に、賃借物である不動産が譲渡された時、賃貸人としての地位は、原則として不動産の譲受人(新たな所有者)に移転するという規定を設けました。
また、不動産の譲受人(新たな所有者)が、賃借人に対して賃料請求をするには、賃借物である不動産の所有権移転登記が必要である旨の規定を設けました。
事例では、Eさんが賃借物の所有権移転登記を備えれば、Cさんに対して賃料を請求でき、CさんはEさんに賃料を支払わなければなりません。
Eさんが登記を備えていない期間については、Cさんは引き続きDさんに賃料を支払うことができますし、賃料を供託することもできます。
次回トピックスでは【賃貸借契約に関するルールの見直し➁】を取り上げていきます。
その他、改正民法の詳細等はお気軽にお問い合わせください。
また、弊社では不動産や相続に関する様々な内容を扱ったメールマガジンを定期無料配信しております。
下記お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください!