成年年齢の引下げ (2022.06.28)
2022年4月1日より、成年年齢が18歳に引下げられました。
明治9年以来、成年年齢は20歳とされていたので、実に約140年ぶりの改正となります。
今回は、成年年齢の引下げによりどういった変化があったのかを確認していきましょう。
これまで日本では当たり前とされていた成年=20歳という認識は、実は世界的にみると非常に稀な状態で、世界的には成年年齢は18歳が主流でした。
近年では、憲法改正の国民投票の投票権や、公職選挙法の選挙権の年齢が18歳と定められるなど、18歳・19歳の方にも国政上の重要な事項の判断に参加してもらうための政策がすすめられていました。
こうした流れを踏まえ、市民生活に関する基本法である民法においても、18歳以上を大人として扱うのが適当ではないかと議論されるようになり、今回の引下げへと踏み切ったようです。
参考:法務省ホームページ 「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」
民法上大きな変更点として、「ひとりで契約行為ができる」という点と、「父母の親権に服さなくなる」という点が挙げられます。
それぞれについて詳細を見ていきましょう。
未成年の頃には制限されていた様々な契約行為を、親の同意を求めずにすることができます。
例えば、携帯電話の購入やアパートなどの賃貸契約、クレジットカードの契約や自動車購入のローンなどが想定されます。
但しあくまで契約行為はできますが、支払い時の返済能力があるかは別問題ですので、ローン契約等ができないケースもあるでしょう。
また成年年齢引き下げにより、これまで18歳・19歳時点で親の同意を得ずにした契約については、親が同意しない場合は取消権を行使することが可能でした。
施行後は成年となったために未成年者取消権を行使できなくなるため、悪徳商法等の消費者被害の拡大が懸念されています。
なお、2022年4月1日以前に18歳・19歳であった方が親の同意を得ずにした契約については、施行後も引き続き取り消すことが可能です。
18歳を迎え成年となった後は、自分の住む場所や、進学や就職など進路のことについて、自分の意思で決めることができるようになります。
もちろん経済的負担の観点からしても、住居や進路選択について、親や学校の先生の理解を得ることが大切なことに変わりはありません。
民法以外の法律においても、民法の成年規定がそのまま適用されているものが多く、それらの法律については、成年=18歳として適用することとなります。
例を挙げると、10年有効パスポートの取得や、司法書士、公認会計士等の国家資格に基づく職業に就くこと(資格試験の合格が必須)、家庭裁判所において性別の取扱の変更審判を受けること、などがあります。
成年年齢引下げは、雇用する企業側にも雇用条件に影響があるようです。
これまで20歳未満の未成年者を雇用するにあたり、「保護者の同意」を必要とする企業が圧倒的でした。
これは未成年者の契約行為に親権者の同意が必要とされていたことと、事故やトラブルなどが発生した場合を想定して、保護者も交えた話し合いが必要であったことが主な要因です。
また、未成年者の雇用については、犯罪やトラブルからの保護を目的として、労働基準法で親権者や後見人または諸葛労働基準監督署長が「労働契約が未成年者に不利と認めるとき」は、将来に向かって労働契約を解除することができるとされています。(労働基準法58条)
しかし今回の成年年齢の引下げに伴い、施行後はこの対象から外れてしまうこととなりました。
保護者の同意は不要とする企業も増えてきたようですが、18歳・19歳は一般的に学業とアルバイトを両立させている学生も多いことから、通常の社会人同様に扱ってしまうと生活バランスを崩すことになりかねませんので、雇用の際は、ひき続き十分に配慮すべきでしょう。
成年年齢が18歳と引下げられた一方で、変わらず従来の20歳以上にならないと認められていないものもあります。
例えば、国民年金の加入義務については、従来通り20歳以上のままです。
また飲酒や喫煙、競馬・競輪・競艇・オートレースなどの投票券の購入、大型・中型免許の取得も従来通りです。
これまで未成年であった18歳・19歳を成年として迎えるにあたり、迎え入れる側の社会も悪徳商法や詐欺などの消費者トラブルや、正しい知識の無いうちの不要なローン契約、消費者ローンなどに対しても十分に注意を促すなど、十分な配慮が必要と言えるでしょう。
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